さすらう隠居人の日記

旅、俳句、映画、ゴルフなど

水羊羹

退任前の一年間仕事をご一緒した人生の大先輩から和菓子を贈っていただいた。私がお世話になったのであるから、立場が逆であるのだが遠慮せず、ありがたくいただいた。
最近、抹茶を楽しむようになり、お茶菓子として今の季節にも合っており、今日は水羊羹をいただくことにした。

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水羊羹

たねやの水羊羹で、食べ方としては容器から直接食べるのが一般的であるようだが、同じ向きに器に移して食べようとしたら少し崩れてしまった。羊羹とは違いとても繊細である。味わいも同様、とても繊細な口当たりと甘さであり、口に入れると溶けて喉に流れていき、美味しく食べることができた。水羊羹の余韻を味わいながら、抹茶も美味しく飲むことができた。

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抹茶と容器から出した水羊羹

 

憂きことを連れて溶けたる水羊羹

水羊羹を食べて、最近読んだ向田邦子の水羊羹のエッセイ(向田和子編「向田邦子ベスト・エッセイ」ちくま文庫)を思い出し、読み返してみた。
向田邦子さんは水羊羹評論家と自称し、いろいろな蘊蓄を語っている。その中で、「墨色の美しさは、水羊羹のうす墨の色にあるのです。はかなくて、もののあわれがあります。」というのが、印象に残っている。また、「水羊羹は、ふたつ食べるものではありません。口当たりがいいものですから、つい手がのびかけますが、歯を食いしばって、一度にひとつで我慢しなくてはいけないのです。・・・その『ひとつ』を大事にしましょうよ。」ともあり、今日は一つを堪能し、保存ができるので、また別の日に楽しみを取っておくことにした。