瀬戸内寂聴さんを偲ぶ
昨日のニュースで瀬戸内寂聴さんが亡くなられたことを知った。
彼女の名を初めて知ったのは中学か高校の頃、自由奔放な女性作家が出家するというので、少し世間が騒がしかったからであった。その後も彼女の著書を読むことはなかった。
20数年前、日本経済新聞の朝刊の連載小説が彼女の「いよよ華やぐ」となり、鈴木真砂女さんをモデルにしたものであった。最初は期待もしていなかったが、題材も良かったためか毎日連載を読むのが楽しみとなった。寂聴さんと真砂女さんは相通じるところがあったのであろう。
連載小説ではモデルとなった鈴木真砂女さんの俳句が随所に出てきて、真砂女さんの俳句を好きになるきっかけを与えてくれ、その後真砂女さんの俳句と生き方に興味が深まっていった。
羅(うすもの)や人悲します恋をして
今生の今が倖せ衣被(きぬかずき)
寂聴さんに話を戻すと、新聞の連載小説は良かったが、その後も本を買うことはなかった。しかし、5年前に本屋で立ち読みをしていると彼女の「わかれ」という本が目に入った。タイトルと装丁に惹かれ、少し読んでみると買わずにはいられなくなった。
その後も短編は時々読んでいたが、今月に入り、「美しいお経」という本を購入した。
仏教書というよりはエッセイであり、やさしく語りかけてくれている感覚である。過去にいろいろなことがあったからこそ、彼女の言葉は心に響くのかも知れない。10月10日発行で、まだまだお元気だと思っていたが突然の訃報で残念である。寂聴さんの遺してくれたものとして大切に言葉をかみしめたい。