さすらう隠居人の日記

旅、俳句、映画、ゴルフなど

半藤一利さんを偲ぶ

年末近くなるとテレビや新聞でその年に亡くなった方のことが取り上げられる。私も今年を思い返してみると、7月6日にブログを始め、特に印象に残っている大島康徳さん、柳家小三治さん、瀬戸内寂聴さん、中村吉右衛門さんについて追想を書いた。

しかし、今年1年間で言うとブログを始める前の1月12日に90歳で亡くなられた半藤一利さんから、私は最も影響を受けている。

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半藤一利(bunshun.jpより)

最初は夏目漱石のエピソードや俳句についての著書から影響を受け、漱石がますます好きになり、漱石の俳句に興味を持つとともに、俳句そのものにも興味が深まっていった。

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半藤一利の本①

その後、半藤さんが昭和史、特に日本が戦争に進んで行った過ちについて、歴史を綿密に検証しながら反省すべきとの考えで、分かりやすく書かれた著書を読み、私の浅薄な歴史観を見つめ直す機会を与えられた。

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半藤一利の本②

半藤さんは戦争は避けなければならないという強い意思で貫き通している。過ちを繰り返さないためには、昭和史を深く検証しなければならない。

半藤さんは歴史を検証するとともに、その中で得たいろいろなエピソード、関連する話も提供しれるので、とても面白い。

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半藤一利の本③

半藤さんが亡くなられた経緯などは、最近読んだ半藤末利子さん(一利さんの妻で、夏目漱石の孫)の「硝子戸のうちそと」(講談社)で読んだ。

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半藤一利の本④+半藤末利子の本

半藤さんの晩年は、大腿骨骨折から始まり、医師の不手際と思われることもあり、不遇と思わせるところもあった。

亡くなる日の真夜中か明け方、このような会話をされているそうだ。
(以下、「硝子戸のうちそと」から引用)
一利 「起きてる?」
末利子「なに?」
一利 「日本人ってみなが悪いと思ってるだろ?」
末利子「うん、私も悪い奴だと思ってるわ」
一利 「日本人は悪くないんだよ」
   「墨子を読みなさい。二千五百年前の中国の思想家だけど、あの時代に戦争をしてはいけない、と言っているんだよ。偉いだろう」

半藤さんの「墨子よみがえる」(平凡社ライブラリー)は購入済みだが、年が明けたら真っ先に読もうと思っている。