認知症と長谷川和夫さん
きのう認知症専門医の長谷川和夫さんが92歳でお亡くなりになったことを今朝の新聞で知った。
今年の5月、長谷川さんの「ボクはやっと認知症のことがわかった」という本を読んだ。
長谷川さんは認知症の診断の物差しとなる「長谷川式スケール」を開発し、認知症の名付けの親といっても良い人である。6年位前に認知症を自覚し、4年前に公表した。
認知症の権威のような方であるが、自分が認知症になって初めてわかったことも書いておられる。長谷川さんの場合は、認知症になっても朝ははっきりしていて、午後にわからなくなり、負荷がかかるととんでもないことが起こったりし、夜はルーティーンなので何とかこなすことができ、その繰り返しだそうである。
本の内容の詳細は省くが、認知症になってもその症状は一日のうちのある一定の時間であり、本人も自覚し不安感が高まるので周りの対応が重要である。
私の母も認知症になり今は私のこともわからないが、この本をあらかじめ読んでいれば、症状が出始めた時にもっと良い対応ができたのではないかと悔やむことがある。物がよく無くなるので、「大事なものはここに入れなければ駄目だ。」とか、会社によく電話がかかってくるので、「仕事中に電話をしてきては駄目だ。」と言っていたので、頭の混乱が増し症状が進展してしまったかもしれない。本当は、「だいじょうぶだよ。」というような心の不安を取り除くような言葉が必要だったのである。
長谷川さんは小学生でひどい気管支喘息で苦しみ、死の恐怖も感じていた時、足を踏み入れた教会で、「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし」(ヨハネ伝)に出会い、心の支えとなったそうである。
ご冥福をお祈りしたい。